私の“おわり”と猫の“はじまり”
---夜も深まり、都内のマンションは静寂に包まれていた。寝室の扉の向こうから、かすかな寝息が聞こえる。あの人はもう眠ってしまったのだろう。
モニターの隅に浮かぶデジタル時計が、無機質な光で深夜の時間を刻んでいる。 小さく伸びをし、私は深く息を吐きながら、画面へと視線を戻す。 しんとした空間に、微かなファンの音と、自分の呼吸だけがかすかに響く。
ようやく納得がいった私は、たった今出来上がったばかりの動画をアップロードするようにアプリケーションに指示を出す。 木目の美しい、存在感のあるデスクに、スタイリッシュかつ機能的なガジェットを並べて、パーツの一つまで選び抜いたハイスペックパソコンを操作する。全てが私のお気に入りだ。
たくさんのお気に入りに囲まれた作業環境を、しばし満足げに眺めながら、コーヒーを一口すする。コーヒーの酸味と苦味、そして少しの甘味に気分を変えると、私は残りの作業に取り掛かった。
作業を終え、PCの電源を切る。 軽く伸びをしながら、ふと気配を感じて横を見ると、あの人について寝ていた猫たちが、いつの間にかリビングで私を待っていた。
猫は軽く伸びをしながら立ち上がり、目を細めながら私に向かって歩み寄ってくる。小さな鼻先を私の手に押し付けてきて、「今度は自分の番だ」と言わんばかりに、さらに強く押し付けてくる。
ソファに場所を移した私に、猫たちはそっと寄り添い、静かに甘えてくる。喉の奥で鳴きながら、くしゃくしゃの毛布を前足で踏む。グルグル、ふみふみ。ふみふみ、グルグル。
可愛らしく、また、どこか滑稽なこの空間に、心がほぐれ、喜びが満ちていく。 私と猫の、静かでゆっくりした時間が流れ、さらに猫のペースへと引き込まれていく。 私のお気に入りの猫たちと、猫のお気に入りの私。この静かな時間が、最高の贅沢だと感じる。
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